「無給インターン=悪」なのか

かなり主語がデカイけど少なくとも自分にはこういう図式があった.インターンを""させてもらっている""のでまぁ無給でしょ,みたいなことを聞くと厳しい気持ちになるし「労働に対して正式な対価を得ないでなにを言ってるんだこいつは????奴隷か????」くらいには思ってた.

とは言うものの直近で無給インターンの案件を2つ抱えている.逆求人のイベントで縁もあって選考をある程度スキップしてもらったこととか,そろそろ就活時期だし「無給インターンはやだ!!」とかも言ってられないかなぁとか思いながら今回のインターンを受けてしまった.

そこを通して色々思う所が生じたので今回この記事を書く筆を取るに至った.

目次

なぜ「無給インターン=悪」という図式が出来るのか

インターン」という言葉を聞くと「就業体験」という意味が真っ先に出てくる.「就業体験」という言葉のとおり,会社の仕事を体験することでその会社を知ろうというものである.

この構図を考えるに「インターンとは会社の仕事をする場である」という認識があった*1.だからこそ「仕事」をしているのに,その対価を「うんうん,君はこの会社の雰囲気を知れたね!おめでとう!仕事の報酬はその経験だ!!!」とか言われると「おいおいどうしたこいつ」なんて思うわけで.

実際にインターンにくる学生を低賃金(あるいは無償)で使い倒して労働源にしている会社も時折聞くことも相まって「無給インターン=悪」という図式が自分の頭にできていた.あるいは悪とまでは行かなくとも労働に対する会社の姿勢がそこに表れているように思えて印象があまり良くなかった.

実際に「無給インターン=悪」なのか

こんな記事を書いていることからもわかることからも結論から言うと一概にそうとは決めつけられないな,と認識を改めた.ただ先に書いておくが別に「無給インターン最高!!」なんて書くつもりはないし,今抱えてる無給インターンが終わったら今後は基本的に有給インターンにしか行かないだろうという気持ちである.

ついさっきまで1つインターンを受けていた.これを書いているのも帰宅時の新幹線である.で,そのインターンを受けて,果たしてインターンは「仕事」をする場なのだろうか,という疑問をふと持った.というのもこのインターン,思い返せば「仕事」をしていなかったのである.

前述したとおり自分には「無給インターン=悪」という構図が脳内にあったので正直この記事に書いてあるような気づきを得るまで今回のインターンは全然身に入らなかったし早く帰りたいしお金をくれという気持ちしかなかった.

NDA的な問題もあるのでふわっと書くが,今回のインターンは企業側が学生相手にわざわざ技術講義を行って,自社で扱っている製品ではなくインターン用のwebアプリを用意してそれを改良しようというものであった.つまり企業としては学生を呼び込むメリットは労働の観点からみると皆無である.別に自社製品が良くなるわけでもないし,むしろインターン用の資料も作らなきゃいけないし懇親会の用意もしなきゃいけないしで自社の労働リソースが割かれる一方である.更に言うなら学生の交通費も宿泊費も出さなきゃいけないわけで必要な金銭も少なくはないだろう.

そんなことを考えると果たしてこのインターンに金銭を要求するのはお門違いなのではないか,という結論に至った.先述したとおり金銭は労働に対する対価である.しかし今回のインターンは労働というよりも企業が開催する開発合宿という表現が近いだろう.労働をしていないのである.ならば「お金をくれ頼む」とずっと言っているのは理屈が通らない.

また,もう1つ抱えているインターンも労働をするのではなく,期間内に完成物を上げてくれというハッカソンのようなものである.もちろんこちらも「金ももらえないしなんでやってるんだろう」と思っていたわけだが,何度も書くようにこのインターンも「労働」をしていない.「インターン」と名がつくものの,実際には「こういうフォーマットでコンテストをやるから来てね!」という内容であった.ではコンテストに参加した場合に「作業時間に対する金をよこせ」と要求するのはどうなのか,と考えるとまぁ火を見るよりも明らかで「お前は何を言っているんだ」という状態である.

以上のことを考えるとインターンには労働をするもの=就業型以外も存在することがわかる.それは開発合宿 or 勉強会のような形式もあるし,ハッカソン or コンテストのような形式も存在する.インターンという名前故に「労働」を想像するが,実際にはそうではなく会社によって様々である.

前述したように「金銭とは労働の対価」であると思っている.この理屈に乗っ取るならば就業型インターン以外で「お金をくれ!!」というのはただのわがままなのかな,と気づきを得た.その気づきのおかげで今回のインターンも途中から気持ちを切り替えることができたし,このインターンなりの知見を得ることも出来て良いインターンだったなと思っている.また,ハッカソンインターンの方も正直途中で蹴ろうかなと思っていた程度にはモチベが落ちていたところから平常程度までの気持ちまで回復した.とりあえず受けてしまった以上は頑張ろうと思う.

ただ念を押すが労働をさせるだけさせて対価を払わない無給インターン=悪ということは変わらないのでそこは見極める必要がある.募集条件だけじゃなかなかインターンの内容ってわかりづらいしね.

インターンに給与を出す意味とは

普段ふわっと思っていたことをいい感じに明文化したものを見かけた*2のでついでに自分の考えを書いておこうと思う.

見かけた文章は「給与をもらうことで仕事に傾かせられる心の割合が違う」,「直接的には労働源とならない学生に敢えて賃金を渡すのは社内環境に自信があるから」というものである.

まず「給与をもらうことで仕事に傾かせられる心の割合が違う」というのは「(単純に)無給インターン=悪」と思っていた自分がインターン中に感じていたことに近い.頑張ってコードを書いていても「でもこれって頑張ったところでお金も出ないからしょうがないしなぁ」とふと思ってしまうのである.全然集中が出来ないし,全く話が入ってこない.なんで自分は今こんなことやってるんだろうと自問自答するばかりである.(上記で書いたように途中から考えを改めたが)

(よく言われることだけど)給与が出ることでそこには責任が発生する.要は「君はこれくらいの会社に貢献できるから対価としてこれくらいのお金をあげます」という契約である.なので仕事をしない,というのはその契約を破ることになるし,責任を放棄していることになる.あと生きていくためには確実にお金は必要であり,そのお金を得るための対価が労働である.だからこそ生きるために労働とお金の反感契約を交わすことになる.それ故に「お金が発生する」という事実があることで仕事に対して真摯な対応をすることになるし,これが「給与をもらうことで仕事に傾かせられる心の割合が違う」なのかな,と考えている.

「直接的には労働源とならない学生に敢えて賃金を渡すのは社内環境に自信があるから」という考えには中々唸らされた.というのも自分はその観点はなかったからである.

労働の対価としての賃金,という話はここまで何回もしたが企業としては別にそれをインターン期間中しかいない学生に対してやるメリットは無いのである.なぜなら教えるコストを払ったところでその学生は会社に残らないわけで,事実だけ見るならば単純に社の開発リソースを学生に割いているだけである.ただ作るだけならそれこそ学生じゃなくて所属している社員が作業したほうがずっとコストが軽いし信頼が出来る.

じゃあなぜわざわざ学生に給与を出してまでインターンを募集しているのか,と考えるとやはり社内環境に自信があるからなのだろう.自信があるからこそわざわざ学生を受け入れるし,魅力的な自社を知ってほしいし,もっと言うなら就活時期には来てくださいという意味がそこにはあるのだろうと考えている.社をオープンな場にすることで世間評価を良くしたいという意図もあるだろうけど,今回は置いておくこととする.

ここからは完全に自分が考えていたことになるが,「給与」が出るという事実にはその会社の余裕と姿勢が読み取れるのかな,と思っている.

「余裕」については先述したことと通じてくるがわざわざ短期間しかいない学生にお金を出す余裕があるということは,会社として安定していないと出来ないことだろう.だからこそそれが出来る会社は別に財政が厳しいわけではないことがわかるし,ある程度経営に余裕があることが感じられる.

「姿勢」については言葉のとおりで「いくらインターンとはいえ労働をしてもらっている以上はその対価を払います」ということがわかる.これだけでも「この会社は労働に対しての対価を払う姿勢」を持っていてそこについてはある程度真摯な対応をしてくれるのではないか,ということが推測出来る.少なくとも無給で労働させるような場所よりかはずっと働きやすく,給与が払われないブラックさがないことは自明である.

インターン中に給与がほしいという欲求はもちろん対価がほしいという意味もあるが,そこに対してルーズではない環境であることがそれだけでわかるし,そういう環境で働きたいという気持ちも自分にはある.

おわりに

色々書いたが要はインターンと一口に言っても色々な形式があるし,非難されるべきは適当なこと言って学生を奴隷扱いして働かせる場所であって必ずしも「無給インターン=悪」ではないということである.

というのと,結局のところやっぱりお金が出たほうがいいし,そういうところの方が(責任感も相まって)吸収出来ることが多くて一石二鳥なので今抱えている無給インターン以降は恐らく有給インターン以外蹴るつもりである.幸いにも有給インターンの選考を通ることができる程度のスキルは持っているっぽいのでそれは利用していきたい.

あとは今回引き受けたインターンを通じて思ったこととしては,お金をもらってコードにレビューをもらえてエンジニアとして成長出来る今のアルバイト環境はもっと利用するべきだな,と感じた.インターン案件とか学会とかでここ1ヶ月行けてないけど諸々が片付いたらまたちゃんと行こうと思った.もちろん行くのは当たり前だけど,自分から「今のアルバイト行ったほうが下手なことするよりお得だな」と気づけたことでまたモチベが変わってきたので今後に活かしていきたい.(このモチベも相まって正直なことを書くなら次の無給インターンを蹴ってアルバイトに充てたい気持ちが強い.しかし引き受けてしまった以上はしょうがないのでやりきるつもりである.頑張ろう)

そういう意味じゃ今回他社のインターンを受けたことで価値観が広がったというか,どういう会社が自分にはあっていてどういう環境が良いのかというのを考える機会となったし,今回行ったインターンは自分に取って結構良かったと思う.メンターさんも優しかったしね.

就活をするにあたってこういう雰囲気の会社が良くて,こういう指針の開発ができる環境だといいなぁみたいなイメージを持てた.また,自分のコミュニティ外の学生を見ることで自分の立ち位置をまた1つ客観的に知ることが出来たので良いことだと思う.これは気のせいか偶然かはわからないけど,どうも自分の周りは同年代にしてはレベルがかなり高い人が集まっている気がしていて,もちろん良いことなんだけどたまにつらくなるのでこういう認識のリセットは非常に大事だった.

余談としては,一応そろそろ就活シーズンだしと思って趣味を削ってインターンに行ってみることを試みたんですけど、QoLが下がる一方だし集中できないしで本当に最悪 .なので好きなコンテンツのライブを蹴ってまでインターンには絶対行かないほうがいい.僕はこれを受けて就職する場所の基準は「アイマスのライブが行けるかどうか」というところが最低ラインになった.自分に取って生きやすい職場を探したいという気持ちが強くなった.SS3Aめっちゃ行きたかった.

*1:最初に行ったインターンがまさにそういう形式であったこともその認識を助長している気がする

*2:無給インターンに参加しているときにこの文章を見つけられたのは非常にタイムリーでだいぶ心が動かされた